メンタルヘルス

 神田沙也加さんが亡くなられた事が報道され話題となっておりました。享年35歳、有名な両親の下に生まれ、ミュージカル女優として活躍し、将来を嘱望され、順風万端の人生かに思われていた彼女が、若くしてその才能を散らせてしまった事は実に残念でなりません。 最近ふと周りを見渡すと、アラサー女子と言われる世代に、不幸にもメンタルになっている方が、昔に比べ多くなっている気がします。アラサー女子に限らず、年齢性別を問わず、メンタル的に健康を損なってしまった事が原因で、自分を傷つけてしまったり、一部の人達は事件性のあるもっと不幸な事態を引き起こしてしまったりしています。 勿論昔からそうした人達が居なかった訳ではありません。しかし過去、今で言うセクハラ、パワハラが当たり前の様にまかり通り、過労で倒れそうな位の残業の連続や、個人の意思や人格無視の人事や組織采配にも遭遇した事のある高度経済成長期を生き抜いてきた世代からすると、なぜ現代、今の世代の人達はそれほどまでに打たれ弱いのだろうとも思います。 ただそれは、日本社会の現状に起因しているのかもしれません。高度経済成長期は、劣悪な労働環境があった反面、将来に対する夢や希望もありました。企業業績や景気も右肩上がりで、給与所得は年々増え、昇格もあり、若くして重責を担ったり、色々な仕事に携われる機会も多くありました。世間も活気を帯びていて、私生活を充実させる人間関係もありました。 現代社会では、個人の意思や権利を守る制度、女性の社会進出を後押しする制度、会社の人事労務制度も昔に比べると格段に進歩している反面、必ずしも将来に夢や希望が持てる世の中ではないし、給与は上がらず、昇格もなかなか出来ない、やりたい仕事に出会う事もそう多く無い、個々人の意思を尊重するあまり組織や周りの人達との円滑な意思疎通が図れずに孤立化してしまう等の問題が起こっています。 こうした状況を抜本的に改善する事は出来ませんが、それでもなおかつそれに耐え、幸せに生きる術を身に付けられるだけのメンタル的な強さと、それを支える環境が必要なのだと思います。人生100年と言われ、医療技術の発展と共に寿命は延び、ヘルスケアの文字を見ない日はありません。しかし、そんな現代だからこそ、精神病と言うレッテルに嫌悪感や罪悪感を抱き、隠蔽や見て見ぬふりをしてきた日本文化を一歩超えて、欧米並以上に、繊細な日本人に合ったメンタルヘルスの重要性を認識する事が不可欠なのだと思います。

2021年12月20日